1998年の直木賞候補作品
題名からすると男性の名をイメージするが、主人公は女性である。 読後、暫く小説を読みたくない心境に追いやられるほどの、この作品は、今私に静かな余韻を残してくれている。読後に表れた心の静けさは、物語の軸となった三人の若者の友情をバックボーンにつづられた人生に触れられたこと。さらに、ラストになって確かな像となって表現される主人公喜知次の存在感に由来するのだろうか。 この作品のストーリーは、裕福な武家の嫡男・小太郎に義妹ができた。藩内には派閥闘争の暗雲が渦巻き、幼友達の父が暗殺される。少年ながらも武士として藩政改革に目覚めた小太郎に、友が心に秘める敵討ちと義妹へのほのかな恋心を絡めて、繊細な表現で清冽に描かれた傑作である。 「政治とは名ばかりで、権力闘争に明け暮れている」と藩の政治をとおして現代を照射し、政治の無策・無能の国家への批判と読めるところもある。 何れ読み返すときが来るかもしれないという予感がする。 ■
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by binjichan
| 2007-08-13 13:52
| 読んだ本の寸評
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