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あかね空  山本一力  文春文庫

126回の直木賞作品。お盆迎え火の日に読み始める。NHKの朝のラジオ番組に時折出ておられる山本一力氏の出世作である。
今月末の衆議院選挙に当たって、現麻生総理は、自民党の責任力を力説されているが、この小説は、家族力の尊さを力説している。貧乏な家に育った主人公が、京都の豆腐屋に丁稚奉公にで、つめに火をともす思いで蓄えた銭を持って、江戸深川に住まい豆腐屋を開業、主人公夫婦の苦労とそれを支援してくれた人たちのおかげで、繁盛し成長していくが、三兄弟の成長とともに、店の将来をめぐって夫婦間の気持ちの差が微妙に出てくる。下町の人情小説として最後までいっきに読みふけってしまう力作である。年のせいもあるが、何度か涙で目頭をぬらされるところがあった憎い作品でもある。
親が鬼籍に入ってはじめて気がつく親に対する子供の心理を余すところ無く描ききっている。
正義の責任力よりも、各家庭が所有しなければならない家庭力を現代に問うている作品でもある。

「三丁目の夕日」の昭和三十年代に思春期を過ごした私の世代には、戦後の貧乏から這い上がろうとする葛藤が、この江戸期の下町小説と共鳴するものが在る。
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by binjichan | 2009-08-14 17:09 | 読んだ本の寸評