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三屋清左衛門残日録 藤沢周平 文春文庫

「別冊文芸春秋」172~186号に連載されたのが、平成元年9月に単行本となった。その文庫本(1994年1月第7刷)を読んだ。
NHKの深夜放送で松平アナウサーが朗読していたので、いつか読んでみようと思っていた小説である。
一遍ごとに完結した短編になっているが、全編を通じて藩主ご用人が隠居してからの日常生活が描かれているのであるが、藩内の派閥争いが底流にある藩内国許での生活であるので、自ずとその流れの中での交流関係が主体と成っている。
定年と当時の隠居生活と同一視するには、多少無理があるが、職を離れての生活という意味では、高齢者の生きる道を示唆しているところがある。
それにしても、この作者の自然描写の旨さには、なんともいえない自然を直視する繊細さを感心させられ、場面に臨場感を漂わせる文章表現に、いつも感嘆させられる。
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by binjichan | 2008-02-29 20:14 | 読んだ本の寸評

風の武士 上下 司馬遼太郎 講談社文庫

久しぶりに読む司馬作品。司馬遼太郎の初期作品には、忍法ものがかなりのウエイトを占める。直木賞作品「梟の城」もそうであるが、この「風の武士」も伊賀の家系を先祖に持つ次男坊が主人公である。江戸から東海道を経て熊野の秘境へ、伝説の秘国の黄金を求めて、幕府の隠密、紀伊藩の隠密が、幕閣や大名、豪商の欲にかられて殺到する。迷路と血の争いの果てにたどり着いたの処は、ユダヤ人の」部落であった。
以前、四国の秘境にユダヤの財宝が隠されている可能性があるともっともらしく記した書をよんだことがあるが、この小説では、熊野の山奥の伝奇物語として、描かれている。
主人公の性格からそうなるのか、会話部分が簡単明瞭で短く、心の動きは()で記されて読みやすく、物語の進展に引きずり込まれていく。が、作者の社会観なのかどうか分からないが、「梟の城」でもそうであったように、目的に向かって壮絶なまでの努力をしても、最後は、読者の想像を裏切り、期待はずれの平凡なところで、落ち着かされている。
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by binjichan | 2008-02-26 08:34 | 読んだ本の寸評

武士の本懐 細谷正充・編 ベスト時代文庫

そうそうたる時代小説作家の武士道小説短編の傑作集である。

武士という階級がなくなって、明治・大正・昭和・平成と時は経たが、武士道の示す生き方に心惹かれる人は多い。人間いかに生きるかの命題がその中に存在しているからであろうか。主に奉ずるために命を絶っても、家系家族を継続させる大きなモラルが武士社会に存在していたからであろうか。終身雇用制の日本の会社組織にもその美徳が引き継がれたように思う。今、その体制も国際競争の波にのまれ変貌した。家族に対する考えもそれと共に変わりつつあるように思えてならない。

武士の紋章 池波正太郎 「歴史読本」1967年6月号
備前名弓伝 山本周五郎 「講談雑誌」1946年5月号
国戸団左衛門の切腹 五味康祐 「週刊朝日別冊」1960年5月号
日本の美しき侍 中山義秀 「別冊文芸春秋」1952年11月号
男は多門伝八郎 中村彰彦 「小説NON]1993年12月号
残された男 安倍龍太郎   「オール読物」1993年1月号
武道伝来記 海音寺潮五郎 「日の出」1936年3月号
権平けんかのこと 滝口康彦 「小説CLUB]1972年6月号
一遍ごとに十分楽しめた作品集である。これからも心の片隅に武士道をおいて、生きたいと思うこのごろである。
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by binjichan | 2008-02-11 12:07 | 読んだ本の寸評

ご隠居忍法 唐船番 高橋義夫 中公文庫

ご隠居忍法の第四弾である。多分この作者の唯一のシリーズ長編である。この作者は平成四年に「狼奉行」で第106回の直木賞を受賞している。千葉県の船橋市生まれであるが、還暦近くになるとよくある田舎志向の作者のようである。
田舎暮らしを探求する読物も書いている。
主人公は奥州の寒村に暮らす伊賀者の子孫で、お庭番の役をとかれて隠居暮らしをしている鹿間狸斎である。江戸の仲間から旧知の人物のある符号をみせられ、死んだと届けられているその人物のその後を確認するため、隠居仲間の新野耕民とともに、北に向かう。
唐船番とは、公儀から派遣され隠密に「抜け荷」を暴く役どころであるが、この唐船番が仕組んだ掌に乗せられ旅をしているとは、最後の最後まできずかず、探索の旅を続ける。
元伊賀者お庭番の主人公は、老いても多様な武術を屈指して蜜命の確信に迫っていく。
心の動きや内面の描写がすくないので、心打たれる作品というよりも、筋書きをおっていく活劇物といえる。
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by binjichan | 2008-02-06 17:55 | 読んだ本の寸評

投げ銛千吉廻船帖 白石一郎 文春文庫

海洋歴史小説作家の異色小説。
千吉は、幼いころから船暮らしで、若くして船を持ち船頭となるが、海難事故により8人を失う。その中には自分の弟2人がふくまれていた。この失態が主人公の精神的な暗部となり、フリーの船頭として、江戸の裏長屋に住み、口入屋からの注文により、船に乗る立場が、この小説の背景である。この千吉が、袂に隠した小さな銛を武器に、人助けをしたり、悪者を懲らしめる短編集である。江戸の下町と海の世界を描く連載。長屋に住む旗本の妾親子と絵描が弟の姉弟とのふれあいを描きつつ、航海での事件にふれていく攻勢であるが、銛の秘術をどこでだし、どう描写されるかに読者の興味は注がれる。もうひとつ、千吉がどのように登場人物の女性と結ばれるようになるかと想像しながら読むのであるが、親切心と護ろうとする気持ちはあつても、作者は、千吉を独り者のまま長屋から遠ざける。シリーズものとして次の展開に制約を与えないためであろう。
1992年の10月から「オール読物」に連載され94年までの6篇を収録したものであるが、その後、収録文庫本の続きを目にしたことがないので、そのことが気にかかる。
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by binjichan | 2008-02-04 12:40 | 読んだ本の寸評

歴代直木賞受賞作家と歴史時代小説

芥川賞と直木賞は作家にとっては、世に認められる偉大な登竜門である。
歴史時代小説においても、この登竜門を越えた作家が、素晴らしい感動的な小説を多く世に問うている。
そこで、歴代直木賞作家と作品をみて、歴史時代小説を探してみるのも一考かと思う。


歴代直木賞受賞作家と作品へリンク
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by binjichan | 2008-02-04 10:28 | 小説の周辺