<   2008年 01月 ( 5 )   > この月の画像一覧

壬生義士伝 上下 浅田次郎 文春文庫

「鉄道員ぽっぽちゃん」で第117回直木賞を受賞した作家の作品。チラッとテレビ放映中のこの映画を数ヶ月ほど前に見た記憶がある。小説の冒頭の部分であったのだが、何らかの事情で見るのを中断せざるを得ず、映画の脚本がどのように構成されていたのか、初めの部分になっているのか後の部分になっていたのかも定かではない。
今回、小説を読み終わり、本当に「にくい」作家であると思った。にくいという意味には、さんざん泣かせてくれたことに対する恨みがかなりの部分をしめるが、にくいほど巧い作品だという意味も当然含まれている。
先に呼んだ「憑神」は面白いという方が適切な作品とおもうが、当作品は、武士道とはなにか、武士社会の不条理や赤貧の飢餓のなかでの生きるということ。更にはその社会での夫婦・親子
・兄弟愛の本髄をえぐってくれた作品だった。
主人公吉村貫一郎が南部藩の大坂蔵屋敷に満身創痍でたどり着いてから、切腹するまで一人称で語るお国訛りの長いセリフに心を打たれ、飲み屋の親父の回想録に引き込まれていく。殆どが、大正時代いわゆる小説の中の現代まで生き残った人の回想が誰だかわからぬ聞き手に向かっての話し言葉でこの小説は構成されている。だからなのだろうか、仁義というものが、食説読者に伝わってくる。
何度も読みたくなる傑作である。歴史時代小説100選を自分で選ぶとすれば、どうしてもその中に入れたいものである。第13回柴田錬三郎賞受賞。
[PR]
by binjichan | 2008-01-30 23:21 | 読んだ本の寸評

戦国武将 リーダーたちの戦略と決断 白石一郎 文春文庫

著者は、62年に「海狼伝」で97回直木賞を受賞、平成四年には「戦鬼たちの海」で柴田錬三郎賞、同11年に「怒涛のごとく」で吉川英治文学賞を受賞している。海洋ものを得意として、有名になっても福岡に居住し続けていたので、印象深い。
本書は、19編からなる戦国武将に関する随筆集であるのだが、新たな資料から戦国の世の武将たちを考察していて興味深い。それぞれの武将の時代が、分かりやすく簡潔に背景として描き出されているので、歴史のポイントがよく理解できる一方、人物の特徴が語られている。今までのイメージと異なる点を歴史資料から引き出そうとする意図が感じられて、面白い。
秀吉の人間管理では、その巧みさと一代で最高峰に上り詰めたゆえの管理上の欠陥が浮き彫りにされている。
竹中半兵衛と黒田官兵衛との知将の比較。武田信玄と上杉謙信の違い。権謀術数に長けた毛利元就など歴史を身近に感じさせてくれる。19編の中でも新たな視点で黒衣の宰相・崇伝と天海を比較した世界は、武将の裏側から見た宗教の大物の側面が理解でき新鮮な知識と感覚を与えられたようである。
[PR]
by binjichan | 2008-01-22 16:11 | 読んだ本の寸評

色懺悔 鼠小僧盗み草紙 多岐川 恭  徳間文庫

鼠小僧こと源次郎はこの小説では、もてる男だ。小柄で見栄えがしないのに、次から次といい女を女房にして暮らしていく。それぞれの女に良いところを見出して、相手が喜ぶことで、自分も満足し、相手を思いやる配慮がある。相手の幸福を考えて分かれる手はずをする。浮気性であるが、この配慮が盗賊にあるまじき魅力となっている。史実に基づく鼠小僧とはイメージをことにする鼠小僧が登場する。
[PR]
by binjichan | 2008-01-09 21:52 | 読んだ本の寸評

風雲 交代寄合伊那衆異聞 佐伯泰英 講談社文庫

このシリーズ「変化」「雷鳴」に続く第3弾の作品である。作者は平成の売れっ子作家で1942年福岡生まれである。年齢も生まれも個人的に身近に感じる上、前身がカメラマンというから、さらにその感が深まる。本屋のスペースをどんどん侵食しており、すでに文庫本だけでゆうに1000万部を越えたと言ううからすごい。まだ、作者の作品は、このシリーズの3冊しか読んでいないが、すぐ続きを読みたくなるストーリーの面白さが、なんともいえぬ楽しさがある。黒船がやってきて幕府崩壊間際がこの背景となっている。歴史上著名な人物が描かれる中で、主人公藤之助が伊那谷で鍛えた剣術を屈指して幕末社会で活躍し出世していく過程を楽しめた。次の「邪宗」「阿片」が早く読みたくなる。が手元にまだないのが、残念である。未読のシリーズも沢山残っているので、あわてずおいおい片付けていくつもりだ。
[PR]
by binjichan | 2008-01-09 10:09 | 読んだ本の寸評

江戸を駆ける 神坂次郎 中公文庫

あとがきで著者が紹介している享保年間の易学書が興味深い。歴史小説を書くために歴史関係の資料を読み漁っている人だから、見つけられるのであろう。
享保年間というと吉宗の時代に、250年後の現在を予言しているのであるから、興味がわく。

「切支丹ノ法イヨイヨ盛ニナリテ空トブ人モ現ハレナム。地ニモグル人モ出デ来ルベシ。風雨ヲ駆リテ電電ヲ投ズル者アラン。死シタルヲ起ス術モ成リナン。サルママニ人ノ心漸ク悪シクナリテ恐シキ世ノ相ヲ見ツベシ。親ハ子ヲハグクメドモ子ハ親ヲカヘリ見ズ。夫ハ妻ヲ養ヘドモ、妻ハ夫ニ従ワズ。男ハ髪長ク色青白クヤセ細リテ、戦ノ場ナドニ出テ立ツコト難キニ至ラム。女ハ髪短ク色赤黒ク、袂ナキ衣ヲ着テ、淫リ狂ヒテ父母ヲモ夫ヲモ、ソノ子ヲモ顧リミヌ者多カラム・・・」

ノストラダムスの大予言底抜けにぴたりと現代を言い当てている。
好奇心の赴くままに歴史資料を読み漁っている著者ならではの、うずもれた逸話が掘り起こされている本書は、今までの歴史観を変えさせられる場面が方々に出てくる。うづもれている人の
紹介もある。
[PR]
by binjichan | 2008-01-08 12:40 | 読んだ本の寸評