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初春弁才舟 御宿かわせみ29 平岩弓枝 文春文庫

NHKテレビでも放映されたおなじみのシリーズである。
宮戸川の夕景・初春弁才舟・辰巳屋おしゅん・丑の刻まいり・桃の花咲く寺・メキシコ銀貨・猫一匹の短・中篇が7作品収録されている。
読み終わってから、すでに半月ほどたってから、このブログをかいているのであるが、初春弁才舟と・メキシコ銀貨を除いては、作品名をみても、その話の内容を思い浮かべることが、できない。シリーズ物の印象はこんなものかもしれない。
初春弁才舟は、大阪から江戸へ正月に間に合うように一番酒を輸送する弁才船の船長とその息子の話。シリーズの主人公である軍艦所に勤める東吾から船長の息子が熱心に洋船の航海術を学び、荒れた海を乗り切り、江戸に一番酒を輸送する感動的な作品に仕上がっている。
最後の部分に
「長き世のとおのねぶりのみなめざめ、なみのり船の音のよきかな」と前から読んでも後ろから読んでも同じ歌で正月のめでたさと船を絡めた描写がこの作品の印象を強いものにしている。

メキシコ銀貨の方は、外国通貨に詳しい風変わりな専門家がシリーズに登場するこどもたちに
この銀貨と日本の貨幣との交換比率の不平等を詳しく教え、この交換により法外な利ざやを稼ぐ悪の存在を東吾に悟らせ、事件を解決する作品である。幕末の通貨事情がわかって面白かった作品だった。
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by binjichan | 2007-09-21 16:37 | 読んだ本の寸評

獄医 立花登手控え4 「人間の檻」 藤沢周平 講談社文庫

オールマイティ時代小説作家・藤沢周平の江戸市井譚シリーズ。ここでも作者の小説つくりの巧さを感じる。
このシリーズの主人公青年獄医の立花登は、小伝場町の牢獄に務めている関係から、獄舎内に泊まったり、叔父の住まいに帰ったりして、町医の叔父を手伝ったりしている。
この叔父夫婦の家庭を描くホームドラマのような面が、浮き彫りになっている。しかし、私は、これを背景にしながら、獄医ならではの立場から働く勘により、主人公が冤罪を解決したり、牢人からの情報により犯罪を未然に防いだりして、現代社会の司法の手助けをしている面に、その面白さを感じるのである。
この「人間の檻」では6話の中篇からなっている。それぞれ面白く読んだのであるが、話の内容が、暫くすると記憶に残っていないのは、なぜなのであろうか。シリーズ物の特徴かも知れないと最近思うようになった。
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by binjichan | 2007-09-10 20:42 | 読んだ本の寸評

交代寄合伊那衆異聞 変化 雷鳴 佐伯泰英 講談社文庫

最近の本屋に行くと、この作家の文庫本が所狭しと、棚の前に広げてある。
昭和の人間には、なじみの薄い作家であるが、このような書店の状況を見ると、人気の作家なのであろうと推測できる。だが、私は今までどの作品をも読んだことがない。写真家から文筆活動に転身、今では平成を代表する時代小説作家であるらしい。
色々とシリーズ物に精力的に取り組んでいるから、急に本屋の店頭をにぎわすようになったのであろう。
タイトルの「変化」と「雷鳴」を買い求めてみた。
司馬遼太郎のものを読んだ後なので、よみはじめは、なんとなくぎこちなさを感じつつページをめくっていたのであるが、いつの間にか作者の趣向に乗せられて、二冊を短時間で読みきってしまった。爽快なエンターテイメント性がそうさせたようである。
初めて江戸に出てきて、江戸きり絵図を眺めてストーリーを楽しんでいるような、読感であった。
激動の安政年間、大地震から物語は始まる。主人公が伊那から甲州街道を江戸に向けてひた走るルートが、私が身近に感じる場所なのでそのままのめりこんでしまった。後は江戸の当時の地図を想像しながら、ストーリーを楽しんでしまった。
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by binjichan | 2007-09-06 20:40 | 読んだ本の寸評

王城の護衛者 司馬遼太郎 講談社文庫

この文庫本には、「王城の護衛者」「加茂の水」「鬼謀の人」「英雄児」「人斬り以蔵」の5編の中篇が収められている。何れも幕末の変革期に登場した五人の人物像である。
京都守護職を押し付けられた合図藩主、松平容保。「加茂の水」では、公家の策謀家岩倉具視の懐刀として、密勅の起草や方策立案に携わった玉松操。
「鬼謀の人」では、「花神」でおなじみの軍事天才、大村益次郎。更に北越戦争の抵抗の要であった長岡藩の河井継之助。五人目が人斬りの異名を取った土佐の足軽、岡田以蔵の五人である。
幕末の風雲をそれぞれ特異な才能と性格でその時代を全うした人物である。
作者の筆になると、この人物たちが身近に存在しているかのように、活き活きと全体像を鮮明に表現されるのは、どうしてなのであろうか。つい続けて読み終えてしまう面白さが、人物表現にのみ捉われず、歴史の背景にうきぼりされて、高い位置から書かれているからであろうか。
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by binjichan | 2007-09-04 22:46 | 読んだ本の寸評

十時半睡事件帖 おんな舟 白石一郎 講談社文庫

作者は「海狼伝」で1987年直木賞、「戦鬼たちの海」’92年で柴田錬三郎賞、’99年「怒涛のごとく」で吉川英治賞を受賞している。
海洋小説の分野を開いた作家ではないだろうか。福岡に在住し執筆されていたので、飲み屋でチラッとお見かけする機会が、在命中、私が福岡に住まっていたころあったので、身近に感じていた作家である。

十時半睡事件帖のシリーズは、福岡を背景とするその風物詩と主人公のキャラクターに魅力がある。52万石の黒田藩家中で知らないものがない名物男でいろいろな奉行を歴任し、生き字引的な存在なのであるが、本人は隠居の身で半分眠って暮らす。
「おんな舟」は7話目で舞台は江戸に移っている。作者が江戸を背景とした小説は、珍しいのではないだろうか。7編がおさめられている、のんびりと緊張感なく読んだ。
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by binjichan | 2007-09-04 19:49 | 読んだ本の寸評