初めて山本作品を読む。人情時代小説というのであろうか、切ったはったの刃傷沙汰がないので、癒される。当文庫本は、何れも花を題名にした「いっぽん桜」「萩ゆれて」「そこに、すいかずら」「芒種のあさがお」の4編からなっている。
「いっぽん桜」 江戸時代のサラリーマン退職物語といえる。大店の頭取まで上り詰めた主人公の退職を言い渡された後の人情物語り。現代に通じるサラリーマンの悲哀とかぶせながら自分と重ねて読んでしまった。そこに登場するのが咲いたり咲かない年があったり気まぐれな庭の桜である。 「萩ゆれて」 土佐藩勘定方の長子、服部兵庫が、切腹させられた父の悪口をいわれ、果し合いのような木刀試合をして、打ちのめされ妹の好意で温泉治療に行く。そこでであった漁師の生活に憧れ、武士を捨てて漁師になることを母親の反対を押し切り断行する。やがて親身になって漁師になる手伝いをしてくれた漁師一家の娘と結婚し、城下に魚屋を開業する。 「そこに、すいかずら」 先代が江戸の材木商だったが大火で消失、その後、せがれが料亭を開業、大尽の紀伊国屋の口利きで寛永寺建立の材木手配の片端を荷い大もうけする。その金の一部で、ヒノキ御殿が3軒も建てられる大枚ををだして、一人娘のために日本一のひな飾りを注文、飾るのに一日を要する大きな拵えで、飾る広さは20畳、40畳の部屋のあるひな屋敷までたてる。さらに、立派なひな飾りが消失しないように、専用の蔵を建造して、江戸の大火から護る。だが、二度に及ぶ大火で店は消失、たくわえで再建するもすぐまた大火で、娘の両親は火事でなくなる。一人残されたその娘は、さてどうしたか。 「芒種のあさがを」 朝顔好きの父は、朝顔の本に夢中である。その娘が年頃となり水掛祭りに出かけた帰り、父の好きな朝顔を買って帰ろうと日本一の朝顔店に立ち寄ろうと道を尋ねたのが、そこの、せがれであった。お互いに惚れあい結婚し、あさがお屋のよめになるのであるが、舅と姑が一曲者で、難渋するのであるが・・・・ 4篇に共通するテーマは、男親の娘に対する愛情の表現である。仕事は異なるが、それぞれの 一人娘に傾ける愛が描かれている。
by binjichan
| 2008-03-12 17:48
| 読んだ本の寸評
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