投げ銛千吉廻船帖 白石一郎 文春文庫

海洋歴史小説作家の異色小説。
千吉は、幼いころから船暮らしで、若くして船を持ち船頭となるが、海難事故により8人を失う。その中には自分の弟2人がふくまれていた。この失態が主人公の精神的な暗部となり、フリーの船頭として、江戸の裏長屋に住み、口入屋からの注文により、船に乗る立場が、この小説の背景である。この千吉が、袂に隠した小さな銛を武器に、人助けをしたり、悪者を懲らしめる短編集である。江戸の下町と海の世界を描く連載。長屋に住む旗本の妾親子と絵描が弟の姉弟とのふれあいを描きつつ、航海での事件にふれていく攻勢であるが、銛の秘術をどこでだし、どう描写されるかに読者の興味は注がれる。もうひとつ、千吉がどのように登場人物の女性と結ばれるようになるかと想像しながら読むのであるが、親切心と護ろうとする気持ちはあつても、作者は、千吉を独り者のまま長屋から遠ざける。シリーズものとして次の展開に制約を与えないためであろう。
1992年の10月から「オール読物」に連載され94年までの6篇を収録したものであるが、その後、収録文庫本の続きを目にしたことがないので、そのことが気にかかる。
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by binjichan | 2008-02-04 12:40 | 読んだ本の寸評
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