憑神  浅田次郎  新潮文庫

この朝日新聞に蕎麦屋の親父のセリフで二八蕎麦と呼ばれる由来が掲載されていたことから、この小説の存在を知ったのであるが、残念ながら、題名が読めなかったのである。
面白い小説に久々にであった。
時は幕末も幕末。貧乏御家人の主人公が、ある夜、酔いに任せて小さな祠に神頼みをした。
神は神でも、貧乏神、疫病神、死神ととことん運から突き放されながらも、懸命に生きる。
この姿は抱腹絶倒。
やがては、感涙間違いなし。
主人公別所彦四郎が養子先井上家でつくった嫡男、市太郎に「限りある命が虚しいのではない、限りある命ゆえに輝かしいのだ。武士道はそれに尽きる。生きよ」といいおいて、意地も忠義も無く御徒士の矜りをもって、その世の輝きのため死する場所に赴く。母も妻も声をあげて泣いていたが嘆いてはいなかった。人々はみな、嘆かずに泣いた。

徳川家の滅亡家庭を背景に、御家人の様子を旨く引き出した傑作だと思う。どの時代にも
うずもれたよき人間がいるからこそ、次の時代が来るのではないだろうか。と考えさせられた。
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by binjichan | 2007-12-24 21:40 | 読んだ本の寸評
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