暗闇草紙 多岐川 恭 新潮文庫

この作者の作品を読むのは、「ゆっくり雨太郎捕物控」以来である。その捕物控シリーズも総て読み終えたのかどうか、確認していないままである。
暗闇草紙はどんな作品なのかイメージのないまま、読みすすめた。娯楽推理時代小説といっていいだろう。湯島の暗闇小路と呼ばれる一角に、わけありげな美しい娘と乳母とが引っ越してきたところから、話は始まる。その娘お春が、強盗に襲われ白い石造りの観音像を奪われた。手習いの師匠で浪人者の主人公・島小平がこの観音像を取りもどそうと、近所の目明し・常吉とともに手を貸すことになるが、像に秘められた謎は深まるばかりである。小平を支える個性豊かな4人の女性たち。師範代をつとめる屋代道場の弟子・徳次の存在がからみ、読み進まざるを得ない面白い意外な展開が続く。

読み終えて、思うのであるが、「暗闇草紙」という題をつけた意味合いが、元長崎奉行が清国の貿易船の財宝に目がくらみ、それを我が物にしようとするたくらみから、それを横取りしようとする裏切りが度重なる醜い人間の欲をさしていたと感じてならない。いや、そう感じ取らなければならない。小路の通称からとったのなら、焦点のぼけた題名と思えてくる。

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by binjichan | 2007-10-21 09:26 | 読んだ本の寸評
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