かくれさと苦界行

隆慶一郎氏は、昭和59年「吉原御免状」で作家デビュー。映画『にあんちゃん」の脚本でシナリオ作家協会賞を受賞。時代小説で一時代を築くが、わずか5年の作家生活でおしくも急逝した。ほかに「影武者徳川家康」「一夢庵風流記」「死ぬことと見つけたり」がある。

この「かくれさと・・・」は「吉原御免状」の1年後に書かれた第二部で、週刊新潮に昭和61年7月から掲載されたものである。何年か前に「吉原御免状」を読んだはずだが、続けて読むべきであった。

全く正史からは想像もつかない創作性をもって面白い物語に仕立てられている。この物語は、1663年から1668年の6年間で、神君御免状に執念を抱く老中酒井清忠と組んだ復讐鬼屋牛義仙が、吉原を取り潰そうと岡場所(かくれさと)をつくり、ついに主人公誠一郎の吉原側と全面対決に及ぶという筋書きである。これに死んだはずの荒木又右衛門が絡み物語を盛り上げている。人を人として認め成り立っている自由と平等の砦である吉原(公界)に対し人間の尊厳を踏みにじることで成り立っている岡場所は苦界であり、この両者を描きながら、戦いは熾烈さを増していく。
この続きも期待したいところだが、三部四部と構想はあったようだが、作者急逝により後が読めないのは残念である。

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by binjichan | 2007-06-14 15:23 | 今読んでいる本
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