久しぶりの藤沢作品。「小説新潮」に昭和58年9月に掲載された秀作で、最近、映画化されたのでおなじみ深い作品である。本書(昭和63年9月)は、表題のほか「うらなり与右衛門」「ごますり甚内」「どわすれ万六」「だんまり弥助」「かが泣き半平」「日和見与次郎」「祝い人助八」の短編が収録されている。
それぞれ、たそがれ・うらなり・ごますり・どわすれ・かが泣きといった極端な性格または習性から渾名をつけられ、他人から侮られていた武士が共通項となっている。それらの武士が、藩内の派閥抗争の中で振るう秘剣の冴えと、各々の癖を通して語られる人生の織りなす微妙な彩りを活き活きと映し出している素晴らしい作品集である。面白く読んだ。 よく「藤沢作品は暗い」と言う人がいるが、私は決してそうは思わない。背景は暗い時代であるが、そこに生きている人たちを描く冴えは、読者にほのかな希望を投げかけてくれることが多い。また、自然の描写のうまさと美しさに救われるところがあると思う。
by binjichan
| 2007-05-13 21:44
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