剣岳(点の記) 新田次郎 文春文庫1981年1月25日第1刷

数ヶ月前、家内が珍しくもお父さんこの映画を見に行こうと新聞広告を指差して言い出した。それがこの小説を映画化したものであった。そのときは、新田次郎氏の現代山岳小説の映画であろうと、聞き流していい加減な返事をしたはずである。なぜなら、映画を見に行っていないからである。
先日、古本屋で歴史時代小説をあさっていると、その文庫本がそのジャンルの棚で見つかったのである。
30年前に印刷されたその文庫本手にして解説を読むと、日露戦争後に前人未踏といわれた北アルプスの剣岳山頂に、三角点埋設の命令を受けた測量士たち山男の苦闘を描いた小説であることを知る。
作者が明治45年の長野生まれであるので、生まれる前のことを資料と実際に山に登り活字にしたことになる。
私の勝手な解釈で、約100年以上前のものを骨董品の対象としている事実から、歴史時代小説もほぼそれに習って、明治時代までをその対象として考えているので、このブログに書き込むことにした。

日本の測量技術は、英国人の指導により明治4年工部省により着手し、後に内務省地理局と兵部省測量課と二本立てで行われ、明治21年に陸軍参謀本部陸地測量部に統一されている。したがって、主人公柴崎測量官は陸軍の文官ということになり、登場人物は、史実に基いた実在の人物である。
何ヶ月も東京を離れ、山にこもって測量のための三角点を埋設し山の頂から測量するまでの苦闘は、想像を絶するが、明治の官僚が成し遂げたのも事実である.
現代の官との隔世の感を感じずにはおれなかったというのが、読書後の一言での感想である。

それにしても、30年前の文庫本の活字の小さいこと、近眼のめがねをはずさないと読める状況では、無かった。余談ながらいつから活字が大きくなったのであろうか・・・
それにしても、山深い天幕の中で、夜カンテラの明かりを頼りに測量記録の整理をしていた測量官の苦悩を思えば、たかが明るいところで寝そべって読む文庫本の活字の大小を嘆いているようでは、先代の努力に申し訳ない思いもする。
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by binjichan | 2009-09-10 11:59 | 読んだ本の寸評
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